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町民手づくりの夏の風物詩「牟岐あんどん展」

毎年お盆の時期になると開催される「牟岐あんどん展」。

“あんどん”とは古くから日本で使われている照明器具の1種。木枠に紙を張り、その中に油皿を置いて火を灯すのが一般的です。
牟岐町では、旧暦の七夕の時期に家の軒先に「あんどん」を飾る習慣があります。

素敵な独自の文化を後世へ受け継いでいこうと、大谷 完治(おおたに かんじ)さんが地元団体“娃佳哩(あかり)”を立ち上げ、町内であんどんを展示する「牟岐あんどん展」を始めたのが2013年のこと。

2020年には、大谷さんの意志を引き継ぐ天羽 賢(あもう まさる)さんが会長に。“娃佳哩(あかり)”は“牟岐あんどんの会”と名前を改め、活動を行っています。

小学校の思い出から夏のお楽しみへ

編集者
「牟岐あんどん展」が始まったきっかけを教えてください。

大谷さん
“娃佳哩(あかり)”を立ち上げた2013年、私が子どもの頃は1万人くらいだった牟岐町の人口も5000人を切って、だんだん町が淋しくなっていくなぁと感じていました。みんなが元気になれるものがあったらええなぁと常々思っていたんです。
牟岐のよさがどこかで出せないか考えたときに、七夕の文化であるあんどんだと思いました。
私は大工職人だったのであんどんを作る材料は身のまわりに揃っている。これやったら自分でも作れるんやないかと思って、知り合いの職人や関心のある人たちと話し合いして「やろうやない!」となったわけです。

▲娃佳哩(あかり)の大谷さん。いきいきとあんどんのお話をしてくれるのが印象的です。

編集者
牟岐町には、昔から七夕の文化として「あんどん」があったんですか?

天羽さん
ずっと昔のことは私も分からないんですが、戦前から各家庭の軒下にあんどんを飾る習慣があったと思います。
私が子どもの頃は、お盆の前くらいに小学校であんどん展をやっていました。教育の一環として牟岐の独自文化を盛り上げていこうという取り組みだったと思います。
ほとんどの家があんどんを持っていたので、私たち子どもはみんなで絵を書いて思い思いのデザインを施していました。

▲牟岐あんどんの会の会長になった天羽さん。懐かしそうにあんどんの思い出をお話してくれました。

編集者
各家庭に1つはあんどんがあるのが当たり前だったんですね。牟岐のあんどんの特徴はありますか?

天羽さん
木枠4本が縦方向に広がる独特の形状。そこに好きな絵を書いて張って見せあいっこみたいなことを子どもの頃はやっていました。
絵柄はなんでもあり。四面分、絵柄を考えないといけないので、思いつかない人はスイカや花火がお決まりでした(笑)

▲行事などに参加してくれた方々が作ったあんどんたち。大事に保管されています。

大谷さん
それぞれの家のおじいさんやお父さんの手作りが多かったので、めちゃくちゃな寸法で作られているのがほとんどだったと思います(笑)。

編集者
小学校のあんどん展は今も続いているんでしょうか?

天羽さん
今もずっと続いています。ただ、小学校を卒業して中学生以上になるとあんどんとの関わりは薄れていってしまう。みんな牟岐の人はあんどんの体験はしとるんやけど、小学校の思い出で終わってしまう場合がほとんど。そこで、大谷さんが登場するわけです!

大谷さん
もともと10~20人ほどあんどんを作っている人たちがいました。その人たちに、せっかくなら景観のいい大川橋であんどんを飾ってみないかと声をかけたんです。
旧暦の七夕の時期に飾るのが通例でしたが、より多くの人に見に来てもらうために帰省が増えるお盆の時期に飾ることにしました。それが1回目の牟岐あんどん展です。

▲大川橋で過去に行ったあんどんの展の写真。記念に印刷し展示しているようです。

編集者
最初はどのくらいのあんどんを並べたんですか?

大谷さん
200個ぐらいは並べたと思います。大工という職人柄、木材の切れ端がいっぱいあったから自分で木枠を作って、町内の家をまわり、絵を描いてほしいと頼んでいきました。
途中からなぜか噂が広がって「描きたい!」という人が増え、最初は80個くらいを想定していましたが、結果200個まで増やすことができました。

編集者
初めて大川橋に並ぶあんどんの姿を見てどう思いましたか?

大谷さん
きれいな景色を作れたので、やってよかったなと思いました。

次の担い手へバトンタッチ

編集者
天羽さんが会長を引き継いだのは2020年とお聞きしました。

天羽さん
紙漉き体験開催のときに手伝いにきたことが“牟岐あんどんの会”に関わるきっかけだったと思います。そのときに「入りませんか?」って言われて「入ります」って答えたら、次に顔を出した時には会長になっていました(笑)

大谷さん
“ふふふふふふ(笑)

編集者
え?そんなにトントン拍子に?(笑)

大谷さん
私も歳を重ねてきて、誰かに引き継いでもらわんと!という思いがずっとありました。いつも誰がいいかなぁとメンバーと話をしていました。天羽さんが来た時に「この人以外いない」と思い、声をかけました。

天羽さん
私自身、中学の教員で技術を教えていたので、モノづくりは元々好きだったんです。いろんなことを教えてほしいなと思い、軽い気持ちで入ったら…会長になってしまったというわけです(笑)

コロナ禍での「牟岐あんどん展」

編集者
天羽さんが会長になられてから牟岐あんどん展はどう変わりましたか?

天羽さん
去年(2020年)、今年(2021年)はコロナ禍の影響で大々的に開催することができませんでした。告知はせずに、こじんまりと行いました。去年は内妻の野球場のところにあんどんを持って行ってドローンで撮影、今年は8月末に観光協会さん主催の花火を打ち上げるときにあんどんを並べました。

編集者
状況が落ち着いたら、どのように活動していきたいですか?

天羽さん
大谷さんがされていたように町内のいろんな人に声かけていきたいですね。
あんどんに絵を描く作業はそこまで手がかかることじゃないですし。簡単に破れてしまうような薄い紙なので、力作を作りこむというよりも、思い描いたものをサーッと表現するくらいの気持ちで手軽に参加してほしいですね。
介護施設や老人ホームの入居者さんたちにも作品を作ってもらうのもいいなぁと思います。そして、子どもの頃のように作品をみんなで見せ合いっこしたいですね。
あんどん展=作品展。自分の作品を出すというのは喜びになるので、「牟岐あんどん展」が地域の発表の場となって、牟岐の人の楽しみになったらいいなと思いますね。

編集者
2019年までは牟岐あんどん展に向けた作品を募っていたということですか?

大谷さん
季節が近づいてきたらね。こちらとしては開催の2~3カ月前から材料の準備はしてたね。あんどん作りに参加したい人がいつでもあんどんを組み立てて絵を描けるように、木枠のパーツをひたすら作っていました。

編集者
組み立ての体験からできるんですか?

天羽さん
希望があれば。大谷さんが作ったパーツはあんどんが組み立てやすいようにできているんですよ。大工さんならではですね。

牟岐あんどん作り体験はこちらから

▲お子さんでも組み立てられるように、丁寧に準備されています。

大谷さん
“今は現役の大工さんに制作もバトンタッチしています。パーツをキットにしてくれています。

編集者
ミニサイズのあんどんが置いてありますが、こちらは何でしょうか?

天羽さん
最初は出羽島アートのおみやげ品として販売していたものなんです。2013年ごろから成人式の記念品にもなっています。

▲お土産サイズに丁度良いミニあんどん。出羽島アート展が行われた時には制作が追いつかなかったのだとか。

大谷さん
子どもたちは一度県外に出て行ったら、牟岐に戻ってくる機会がガタっと減ってしまうでしょ。
都会で暮らす牟岐の人たちにふと故郷を思いだしてもらうために、ミニあんどんを作ったんです。成人式だったらほとんどの人が帰ってくるから、そのときの土産に作ってというリクエストもあって、記念品になりました。

編集者
大谷さんも天羽さんも牟岐生まれ牟岐育ちということで、牟岐のいいところを教えてください。

大谷さん
他のとこ知らんから、分からんなぁ(笑)

天羽さん
“牟岐やけん”っていうのはないけど、生まれ育った町だから大事な存在。私は学校に勤めていたので、人口が減っていることを直に感じて淋しく思うこともありました。
今、中学生は各学年の生徒が20人前後なんです。子ども達一人ひとりに目を向けられることはいいけど、何をするにも人数が少ない…。人数のせいで、できることが限られてしまうのはもったいないと感じますね。だからこそあんどんを通じて楽しみが少しでも増えればと思います。

自分自身が楽しみながら活動ができたと振り返る大谷さん。
次の開催に向けて意欲を燃やす天羽さん。

2人が育ててきた「牟岐あんどん展」は町の人にとっても大きな存在に。200個に及ぶ手づくりの「あんどん」の柔らかな灯りが
橋を照らす情景は神秘的です。

町民にとって小学校の思い出の一つにすぎなかった「あんどん」ですが、今は「牟岐あんどん展」があることで夏が来るたびに牟岐の美しい文化に触れることができます。

また、成人式の記念品である“ミニあんどん”は外に出た人にとって故郷のお守りのような存在になっているに違いありません。

牟岐の人みんなにとっての作品展としてこれからもずっと続いていってほしいイベントです。

▲牟岐あんどんの会の活動場所に展示されているあんどん。綺麗な光に癒やされますね。

 

今回の牟岐人

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大谷 完治(おおたにかんじ)
天羽 賢(あもう まさる)

牟岐あんどんの会
牟岐あんどん作り体験

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