牟岐人 - MUGIZINE

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種から育った実生の柚子を牟岐の新しい特産品に – JAかいふ牟岐 正路 進さん


牟岐川の横の前に立つJAかいふ牟岐事務所。
自然が豊かな牟岐町は海の町であり、山の町であり、農業の町でもあります。
今回の牟岐人は、JAかいふ牟岐事務所に勤めて約40年、地元の農家さんと向き合い続けている正路進(しょうろ・すすむ)さんを訪ねました。

農家の悩みごとに寄りそう仕事

▲この日はJAかいふ牟岐事務所の二階でインタビュー。

編集者
生まれも育ちも牟岐町とお聞きしました。どういった経緯で今の職場に入られたんですか?

正路さん
牟岐町灘の農家の家で生まれました。
高校は新野高校の園芸科へ。幼いころに父を亡くして、母と祖父母に育てられたので、農業のことを勉強して役に立てればと思っていました。長男ということもあり、牟岐の外に出る気はあまりなかったように思いますね。
高校卒業後は半年ほど印刷所に勤務していましたが、農協の求人があったので転職しました。それが19歳のとき。それから57歳の今までずっとここで働いていますね。

▲約40年間働いているJAかいふ牟岐事務所。外観にも歴史を感じます。

編集者
現在はどんなお仕事をされていますか?

正路さん
30年以上、購買事業部に在籍していて、町内の農家さんに肥料や農薬を販売したり、営農指導を行っています。

編集者
日頃から農家さんの悩みや困りごとに寄りそうお仕事をされているんですね。

正路さん
そうですね。牟岐町の農業を盛り上げていきたい、農家さんに儲けてもらいたい。そんな気持ちで接していますね。

編集者
牟岐町の農業でメインとなる作物は何でしょうか?

正路さん
一番多いのはお米です。野菜だと細ネギ。どの作物でもそうなんですが、特にホウレンソウやブロッコリー、オクラは高齢化で減ってきてしまっています。

▲新米の季節になると徳島県の市場では一番最初に出回るようになる「はなえちぜん」。美味しい新米をいちはやく楽しむことができるのです。

編集者
担い手不足は多くの町が抱える難しい問題ですよね…。何か取り組みをされていますか?

正路さん
ただ農産物を作るだけでは厳しいので、町内のスーパー・オオキタに産直コーナーを設けてもらっています。それと、牟岐で育てているお米「はなえちぜん」は7月の終わりに収穫ができ、日本でも3番目の早さで市場に出回る新米です。新米の季節はいち早くスーパー「キョーエイ」で売りだすようにしています。

▲知識のないこちらにも分かりやすく説明してくださる正路さん。さすが約40年勤めてこられただけあります。

地元のお母さんが手がける“母ぁちゃん”シリーズ

編集者
地元の農産物を使ったオリジナル商品を開発されているとお聞きしました。

正路さん
そうなんです! 元々、JAかいふ牟岐事務所の女性部が自分たちで作ったものを持ち寄って、この建物の前で販売していたんです。それを5年ほど前に“母ぁちゃん”シリーズとして商品化。お母さん方が昔ながらの製法で味噌やもち麦味噌、こんにゃくをこしらえています。

▲“母ぁちゃん”シリーズのマヨネーズともち麦を使ったみそ。牟岐で穫れるゆずやもち麦を使っているのがポイント。

編集者
“母ぁちゃん”シリーズ。お母さん方の手の温もりが伝わる素敵な名前ですね。由来があれば教えてください。

正路さん
牟岐産の細ネギを昔は“母ぁちゃんネギ”として販売していたんです。今はその名前がなくなってしまったので、この加工品シリーズで受け継ぐことにしました。

編集者
なるほど。名前が継承できて良かったですね。“母ぁちゃん”シリーズのそれぞれの商品の魅力を教えてください。

正路さん
原料となる米やもち麦、こんやく芋はもちろん牟岐産。味噌は発酵させるところから手間ひまかけて作っているんですよ。こんにゃくは芋が採れる11月・12月の期間限定商品。一般的に粉から作られたこんにゃくが多いと思うんですが、芋から作るこんにゃくは味が全然違う。美味しいんですよ~!

牟岐育ちの柚子に光をあてる

編集者
最近は実生(みしょう)の柚子にも力を入れられていると聞きました。改めて実生の柚子とはどんな柚子のことを指しますか?

正路さん
接ぎ木をしない種から大きくなった木のことを実生の木といいます。柚子が収穫できるまでに18年ほどかかり、凝縮された香りと味が特徴です。

▲こちらが実生の柚子。野生のなかで種から育っているのと、農薬も一切使われていないため、通常の柚子よりも香りが強いのが特徴だそうです。

編集者
牟岐には実生の柚子の木がたくさんあるのでしょうか?

正路さん
昔から料理に使うために庭に植えている家が多く、今では30軒ほどの農家さんの家に実生の柚子の木があるようです。3年前に、この柚子を生かして何かできないかと考えました。海外では実生の柚子は希少な存在で、特にフランスのシェフに好評という話を聞いてフランスに輸出することにしたんです。現在は年間で3万トン弱の実生の柚子を収穫し、海を越えてフランスに渡っています。

編集者
牟岐で育った実生の柚子がフランスで活躍しているんですね。

正路さん
外でお日さまの光を浴びて育つので見た目は不揃いなんですが、苦みが少なくて味がいいんです。フランスに輸出するだけではもったいないので、実生の柚子から搾った果汁をJAや道の駅日和佐などで販売しています。それと、今年は新たに加工品を作るチャレンジをしました。

編集者
どんなものが完成したんですか?

正路さん
一つは「母ぁちゃんマヨ」。実生の柚子の果汁と刻んだ皮、そして“母ぁちゃん”シリーズのもち麦味噌を原料にマヨネーズを作りました。味噌のコクと柚子の香りを効かせた一品です。もう一つは「ポンジュレゆう」。こちらも果汁と皮、もち麦味噌を入れてアクセントにしています。牟岐では柚子のことを「ゆう」と呼ぶので、地元の人にとって馴染み深いこの名前にしました。

編集者
どちらも牟岐ならではの加工品ですね。町の人は、新しい加工品について知っていますか?

正路さん
町内にあるスーパー「オオキタ」やみずた商店に置いてもらってみなさんに認知してもらえるよう売りだしている最中です。松茂町にある徳島の特産品が揃う「とくとくターミナル」でも取り扱ってもらっているので、町外や県外の人にも広まってほしいと思っています。そして少しでも農家さんの収入源になれば嬉しいですね。

▲実生の柚子に着目し、それを使った加工品を売り出している最中なのです。

編集者
今後、新商品を作る予定はありますか?

正路さん
牟岐町役場の産業課や地元のお母さん方などの意見を聞いて新しい企画をどんどん練っていきたいと考えています。今は実生の柚子を使ったお茶を考案中。年内の販売を目標に進めています。

▲考案中の「ゆず茶」。ゆず茶ってホント美味しいですからね。販売されるのが楽しみです。

編集者
最後に、牟岐の魅力はどんなところだと思いますか?

正路さん
まずは人が優しくて親切なところです。それと自然に恵まれているところ。子どもの頃は海に行ったり、山に行ったり、自然が遊び場でしたから。だから今は、自然を生業をしている農家さんに少しでもお金をおとす手伝いができたら嬉しいと思います。牟岐の農産物から生まれた加工品もみんなの力を借りながら、たくさんの人に広めていきたいです。

「牟岐の農業を盛りあげたい」。
インタビュー中、正路さんが繰り返し口にした言葉から、農業にかける思いが伝わってきます。
牟岐に古くからある実生の柚子に目をつけ、新たな価値を見いだしたように、これからも町の農産物が持つ魅力を発掘し続けてくれるのではないでしょうか。
次々と新作が飛びだす“母ぁちゃん”シリーズにも注目です。

今回の牟岐人

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正路 進(しょうろ すすむ)

JAかいふ牟岐事務所 購買事業部
海部郡牟岐町大字中村字本村5-2
0884-73-1216

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