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海と暮らす~牟岐東漁港の早朝~

海と暮らす~牟岐東漁港の早朝~

2014年11月18日AM5:00。牟岐町の空はまだ暗く、星がはっきりと見える。冬へ向かう澄んだ空には、山の稜線が僅かに見える。気温も下がってきている。街からやってきた者には、朝よりも夜という感覚の方が合う。しかし牟岐の港町に暮らす人々の一日は、とうに始まっている。この記事では、牟岐町東漁港の周辺の、「ある朝」の風景を追ってみた。

AM5:14

▲漁港東側、赤の灯台に続く道。船着場付近は、時折沖に出ていく船の音がする。

 

▲赤の灯台に続く道、堤防側から撮影。右側に見えるのは水路。

 

今朝の東漁港は、この時期にしては暖かい。風もほとんど吹いておらず、散歩している人も見かける。周りが真っ暗なことを除けば、確かに朝の感じがする。港内の様子は、既にみな漁に出ているのか静かだ。日の出まであと1時間ほどの時間、東漁港周辺をぶらぶらと歩いてみることにした。

 

▲牟岐東漁協付近にて。既に漁を終えて網を整備していた漁師の方。

漁港の中を歩いてみる。まだ静まっている場所が多いものの、船の近くで作業している漁師の姿がぽつぽつとある。偶然知り合いの方がいたので声を掛けると、もっと早い時間に漁に出ていたとのこと。水揚げ後の片付けがちょうど済んだところだったようで、この時期の漁の様子を話してくれた。9月から解禁されたイセエビ漁も冬が近づくに連れて減り、次は別の魚種の漁が始まるという。

 

AM5:38

▲灯台に続く道から港内を眺む。一つ、また一つと漁船が通り過ぎる。

漁港から東側の灯台に続く道を行くと、沖に出ていく船の灯火が右手に見える。堤防からさっきいた町の方を見ると何倍も明るく見え、なんとも不思議な気分だ。景色を眺めながら歩いていると海に落ちそうになり、一瞬ヒヤっとする。歩いた先の行き止まりは、赤い灯台が建っている。灯台のもとから沖のほうを見ると、テトラポットの堤防が暗闇に浮かび上がるように照らされている。

 

AM6:02

▲漁に使われている網。近くで見てみると、とても丁寧に片付けてあった。

堤防を引き返して漁港へ戻ると、いつの間にか漁から戻ったのだろうか、山になっている網を手繰って作業をしている人影があった。

 

▲網を手繰り、獲れた魚や海老を網から外している人。引っ掛かっているというよりは絡みついている、と言ったほうが合い、すごく取りづらそうである。だが、慣れた手つきで流れるように外していく。

近くで見てみると、網にかかっているものは様々だ。アイゴ、タカノハダイ、エガミ、カサゴなどの磯魚、カニやエビの類、サンゴ、海藻、貝殻、正体がまるきりわからない物体…「あはは、そんな大したもんかかっとらんけん。」と漁師さんは言うが、知らない人が見たら興味を持たずにはいられない。その中でも異彩を放つ奴が、網から外されてもにょきにょきと動いていた。

 

▲ひときわ目を引く奴がいた。名は「雪駄海老(せったえび)」。美味。

これは…なんだ?脚と目と…尻尾のある、、、平べったい、、、エビ?こいつは名前をゾウリエビ、この辺りでは「雪駄エビ」と呼ぶらしい。イセエビと同じく高値で取引されるという。

 

▲かごに入れられたイセエビ。目が良く、満月の明るい晩には漁ができない。手で掴むと、「キィーッ」と音を立てた。

おばちゃんが雪駄エビをイセエビと同じかごに入れながら「段々寒うなってきとるけん、エビも海の底でじっとしよるわ。9月の解禁の頃なら、水揚げするとバッチバッチ跳ねまわっとる」と教えてくれた。海に暮らすと、そういうことでも季節を実感するのだな、と思った。生物を見たり話をしていると、「これ持ってくけ?」と、磯の魚を数匹頂いた。思わぬ収獲にびっくりする。帰って調理するのが楽しみだ。

 

AM6:29

▲気づくと空は白み、港の奥の木々の輪郭がはっきりと見える頃になった。
▲赤と白の灯台もはっきり見え、トビが空を舞い始める。

すっかり辺りは明るくなり、また港の中をぶらついてみる。ほどなくすると、船から降り立ち二人組になって網を補修しながら畳んでいる人がいた。そこでもお話をさせてもらっていると、網にかかっていたものを渡してくれた。

 

▲これは、サンゴ。木のような、毛細血管のような奇妙な形だ。

他にもブダイのような鮮やかな魚、ハリセンボンなどもいる。さながら水族館のようで面白い。

 

▲途中で手伝いに来た方も加わり、あっという間に網が片付けられていく。

魚やサンゴを見ていると、住宅のある辺りからおじさんが2人、胴長と手袋をはめながらやってきた。2,3挨拶を交わすやいなや、網の整備に加わる。漁師ではなくても、近くに住んでいる知り合いなので、昔から手伝いに行っている、ということだった。漁業を営んでいなくても、こうやって身近に海を感じることが出来る。都会では考えられない、魅力的な生活だと思った。

 

AM7:08

▲堤防を散歩する人と、犬。奥に見える島影は出羽島だ。

牟岐東漁港の「ある朝」の風景。漁師町の、普段通りの営み。僕にとっては新鮮でいて落ち着くような時間だった。朝に早起きするのは慣れないと大変だけど、牟岐に暮らしていると「早起きは三文の得」ということを実感する。次も早起きしよう。

 

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