牟岐の中で時折見かける、白い軽バンの移動販売車。どんなものが売ってるのか?どんなところへ販売に行くのか?店主の高藤俊雄さんに、1日付いて行ってみました。
たかふじ商店が気になる
牟岐に来てから、買い物や食事で訪れるお店は大体わかってきたのですが、山側の集落に行った時にたびたび見かける、白い軽バンの移動販売車はいったい何だろうか?と気になっていました。
こちらがたかふじ商店さんの看板。と言っても車内に掲げてるので、外からは普通の軽バンにしか見えないのです。
6月、梅雨の合間を縫った晴天の日。9:00頃に出発し、まずは辺川の横瀬へ向かいます。
トコトコと走る軽バンが停まったのは、あるお家の前。高藤さんがハッチバックを跳ね上げて販売台を準備する頃には、もう家の人がカゴを下げてやって来ました。
そしてすぐさま品物を選び、買って…じゃあなく、「ええ天気やねえ~」「やっと選択できるわ~」と和やかに話し始めるのです。
「ほんでこの兄ちゃんは誰なん?」
「活性化センターのカメラマンよ~。わしを取材したいんだと。」
「あら、ええねえ!かっこ良く撮ってもらいよ~。」
と、こんな感じにゆったりと過ぎていきます。
高藤さんの販売スタイルは、箱を一つづつ開けながら「ほら、モツ(魚)。大きいよっ」「こっちはフナゴ。焼いても煮付けても良し」と、手際よくお客さんに見せていくのです。これだと体が弱くて動きづらい人でも助かりますね。
別のお家の前で、なんと包丁を取り出し魚をおろし始める高藤さん。つやつやとしたカツオが丸1匹取り出され、
ススッ、スッと頭やヒレが外され…
ズザッと身と骨を切り離すまで十数秒ほど。早い。身が全く傷んでいない。これをさらにサク切りとして半身いくら、1/4身いくらという感じで売るのです。残った半身はまた次の場所で売れて…と、なんだか時代小説の魚屋さんを見ているような感じですね。
さて、次は辺川の喜来へ向かう高藤さん。
辺川駅とは反対側にある農家のお家へ到着。大きなトラクターや農機の置いてあるところから歩いてきたおっちゃんが、魚を吟味しながら高藤さんと雑談。「農業のことやったら、このおっちゃんに聞けばなんでもわかるけんな、聞きよ~。」と笑う高藤さん。こんな感じに、めっちゃ快活で優しい人なんです。
たかふじ商店のラインナップ
その後、何故かモミジのきれいな葉っぱが真っ盛りのお家へ。ここで、たかふじ商店のラインナップを紹介してみましょう。
品揃えは、鮮魚はもちろんのこと他にもまだまだあります。こちらは鳴門金時。ああ、焼き芋食べたいな。
ソーセージ、ハム、ウインナー、お揚げさんですね。
もずく、カニカマ、レンチンでいける餃子。玉子豆腐懐かしいなあ。ふつうの豆腐もあります。
イカに焼き鳥、らっきょうと…これ、なんだかわからない魚だったのですが…なんと、トビウオです!
ぷりっぷりのアジ。この時期、最高にうまいです。
側面ドア内側には、ポカリやリポD、お茶などが。下の段には海苔、ふりかけ、すしの素などが収納されてます。
反対側はこんな感じ。美味しそうなパン、バナナ。そして右上のボンカレーゴールドに視線が吸い寄せられます。
というわけで僕もお腹が空いたので、朝飯を買うことにしました。
まだ他にも色々あるのですが、軽バンの中にこれだけの商品が揃えられてるのです。しかも棚や台は手作りの1点モノ。行く先々で、笑顔で販売をしつつ魚をさばいたり大工仕事も出来たりと、高藤さんは何でも出来てかっこいい。
行き先々で繰り広げられる会話
喜来の奥のほうへと車は進みます。
このおっちゃんも魚を購入。今日の売れ筋は鮮魚と甘夏みかんのようです。このおっちゃんも気さくな方で、気軽に来いよ~と言ってもらって嬉しい限り。高藤さんについて行くと、自然と溶け込める感じがします。
キツそうな坂もすいすい進む白の軽バン。
坂の上のお家で出迎える、笑顔の素敵なおばちゃん。「ほんまに、ここでもあっちゃでも可愛がられる(イジられる)けんな、参るで~」「可愛がってくるんは高藤さんやないの~」といった掛け合いが始まります。ほんとに天気も良く、素晴らしい時間ですね。
こちらも、今晩のおかずになるようです。右のパックは太刀魚です。牟岐の家庭でよく作られる、太刀魚ときゅうりの酢の物が激ウマなので、いいね!と思う方は牟岐に引っ越してきて下さいね。
喜来の細道に入ると、見たことのある原付き。ベテランハンターの島田さんのお家にもやって来ました。なんと、でかい鹿を仕留めてこれから解体に向かうそうです。
立ち寄った先で軒先で涼んだり手洗い場を借りたりと、高藤さんと地域のお客さんとの間には大きな信頼関係ができているのです。
さて、辺川から今度は鬼ヶ岩屋の方面である橘に向かいます。向こうに見えるのは、国道55号ですね。
向かった先の家では、なにやらおばあちゃんが離れで何かの仕事をしていました。購入した商品を一緒に離れの冷蔵庫まで持ってく時に見せてもらったのですが、なんと業務用のミシンで縫製の仕事をされているのだそう。牟岐に住む方は、総じて「生涯現役」というタフネスな感じがします。
牟岐のお家を回り、時刻は11:00過ぎ。まだまだ行きます。向かう先は、峠を越えた先の日和佐(美波町)。さあ、次はどこでどんな会話があるのでしょうか?
後編はこちら→日和佐編